昭和2年からはじまった北海道第2期拓殖計画において、国が根釧原野を本格的に開発するための試験研究強化機関として設置したのが、北海道農事試験場根室支場でした。
今回紹介する伝成館は旧庁舎。当時根室管内では初めてであった鉄筋コンクリート造2階建という建造物は、「移住者に安心感を持たせるため」という政策的意図もあったそうで、事実試験場ができてから中標津市街の人口は急激に増えていきました。
現状は、屋上へ大屋根が設置されたり、窓まわり建具の変更がある他、外壁にはサイディングが張られるなど、いくつもの改修や変更はあるものの、創建時の概形をよく保っており、また3階のペントハウス部分では、創建時の窓建具や外壁の黄土色系モルタルなども遺されています。
北海道庁営繕事業における鉄筋コンクリート造の初期を飾る作品の一つであるこの建物は、中標津発展の礎であるとともに、北海道の近代建築史や産業史を語る上で貴重な資産でもあるのです。
※文化財に登録されたのは昭和2年建設部分