Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜

タラノキ

タラノキ(ウコギ科)日の当たる藪に細かいトゲトゲの木が何本か続けて生えているのを見た方は多いだろう。

春、この木の若芽を摘んで食するのだが、これが山菜の女王と呼ばれるタラノキだ。

食べごろは芽が多少開きかけるあたりが一番に思える。ちょうどグーからチョキになるぐらいが良く、かたくななグーは早すぎるし、かといって完全にパーになってしまってはもう遅い。別な木をお探しいただくか、また来年のお楽しみに覚えておくしかない。

多少開いていても強引に採って食べてしまうのは自然に優しくないし、なんといっても春を味わおうとする気分からかけ離れてしまう。

多くも必要ない。よくタラの木の上から下まで芽をすべて採られてしまった木を見かけるが、なんとも悲しい気分になる。釣りの帰りにでもたまたま発見して1回分摘むぐらいがよいのである。たくさん採っておすそ分けしようなどとはぜひ思わないでほしい。細く長く楽しむのが山菜とのお付き合いの礼儀である。

タラノキとセンノキ(ハリギリ)を間違えて採った方の話を聞くが、両方の木にはトゲがあり、芽の吹き方もなんとなく似ている。葉が出ると違いは明白なのだが、それまで待てというのは無責任だといわれるので、センノキの方が木肌が少しスベスベしていてトゲも大きく少ない。枝わかれのしかたが違うのも主な見分け方である。また、タラノキは何本かかたまるか、連続する生え方をするが、センノキは単独が多い。わからないときは辺りを見回すのもひとつの手である。私はセンノキの味見の経験はないが、食べてみてその間違いに気づいたのだろうか。その方には悪いが御味見の結果を聞いてみたい。

もしかしたら、いまだにだまされて食べている方もいるのではないだろうか。

ウドの若芽は形と味が似ている。これは採るのを間違えるのでなく、食べたときに間違えるのだが、タラの芽よりあくが強いのでわかる。これはこれの味といったところ。

本物の食べ方はやはり何といってもテンプラがおいしい。朝摘んだまま綿毛の残るやわらかく開いたタラの芽を水で洗い、半分に切り、良く水を切った後油に浮かし、カラリとした揚げたてに塩をひとつまみ振りかけ口に運ぶ。味は癖なくあく弱く春の女王よろしく、体のすみずみまで春がゆきわたるような気がする。

もちろん酒も一緒だが。


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