バターをたっぷりとしいたフライパンで薄切りニンニクを炒め、香りがついたころ、背中にばってんの切込みを入れた標津岳のふもとで採った野生のシイタケをおもむろに、且つ大胆にフライパンに乗せる。「じゅっ、じゅーっ」という心地よい音とともに野生の香りが台所に充満する(もったいないから匂いも全部吸おう)。
シイタケが多少しわしわのヘナッとなったところで真っ白なお皿にのせ、さっとおハーブソルトとバジルをふりかける。そして、この日のために買った赤ワインをグラスに注ぎ、ナイフとフォーク(箸ではいけない)で、いかにもフランス料理4つ星店のごとくいただくのである。歓喜の瞬間、至福の時である。
北海道はキノコの宝庫で、夏から秋にかけてたくさんの種類が採れ、食卓を賑わしてくれる。当地でポピュラーなのはボリボリ(ナラタケ)にはじまり、タモギタケ(タモキノコ)、ホンシメジ(ハタケシメジ)、ラクヨウタケ(ハナイグチ)、極めつけはシイタケとマイタケだろう(もちろん野生の)。
一応全種類食べたことはあるが、マイタケは一度しかない。シイタケは採取したことを含めて三度ほど。しかし、その味たるや、栽培品とは一味も二味もちがう。
キノコには食べられない種類もあり、食べても美味しくないもの(不味)と、食べてはいけないもの(毒)がある。
有毒な種類にはタマゴテングダケのように食べた人を死に至らしめるものもあるので特に注意を要する。食毒の判定には、「縦に裂けるものは食べられる」とか、「虫が食べているものは安全だ」、「食べられるキノコは良いにおいがする」、「原色の美しいキノコには毒がある」、「どんな毒キノコでも塩漬けにすれば食べられる」などと言われたりしたが、これらは全く根拠がない。それよりも毒のあるキノコの種類は少ないので、こちらを覚えてしまうという方法が有効である。
あえて言うなら、食べたことのないキノコは食べない方が良い。
毒キノコの「毒」にはいろいろあり、前記した生命に影響のあるものから、昂精神作用を持つものもある(こちらは世界の未開の地では今でも祭りなどに使っているという話がある)。
この辺でも似たような種類のキノコはあるので、もしも実験したことのある勇者は...いるのかな?。