Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜

ヤマブドウ

ヤマウドウ未熟秋のよく晴れた日、山奥の林道を進むと、蔓(つる)が木にからみつき、大きな赤い葉をひらひらと風に揺らしている。コクワやミヤママタタビとならび北海道の秋を楽しませてくれる最もポピュラーな植物である。

その、たっぷりと太陽の光を浴び黒褐色に熟した実を採取し、野性味あふれるジャムにしたり、焼酎に浸け果実酒にするのもこの季節の楽しみの一つだ。色がよく出るようにと度数の高い酎焼に浸ける方法が良く使われるようだが、中にはアルコール度数をおさえたのを好む方もいる。

一方、変わった楽しみ方にはウィスキ−に浸けてみたり、あるいはブドウそのものをアルコールに変えてしまったり(これは法に触れる恐れがあるのであまり勧められない)、バリエーションを楽しんでいる。そのものを飲み物にするのはなかなか難しく、いや発酵はするのだが味がなかなか整ってくれないのであって、そのうち忘れてしまって、すっぱくなってしまうのが落ちであったりする。

ヤマウドウ完熟ブドウがなぜアルコール発酵し、葡萄酒に変わるかというと、ブドウに含まれる糖分に同じくブドウにある天然の酵母菌が作用しているからである。

この理屈はほとんどの酒で共通で、米は澱粉が糖分に変わり、日本酒になるし、ウィスキーやバーボンもそれぞれ麦やトウモロコシが同じ道をたどる。そしてこれを飲むことによって魂がふわふわと理性の制止を振り切ってさまよい始め、気持ちよくなるのである。

かのジュリアス=シーザーも愛飲したという蜂蜜酒は結婚式の酒となり、若夫婦は半月の間蜂蜜酒を飲みせっせと愛し合った。そこからハネムーン(ハニー・ムーン=蜜・月)の名が付いたという。

もしかしたら、人類が初めて飲んだ酒は自然の葡萄酒だったのかもしれない。たまたま偶然に落ちたブドウが木のくぼみにでも溜まり発酵したか、それともしまい忘れたブドウがそうなったのか。そしてそれを飲む機会を与えられた者は、どうなったのだろう。のんべだったのか、下戸だったのか、くだをまいたのか、吐いたのか、二日酔いはあったのか、などなど...。


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