Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜

アザミ

エゾノサワアザミアザミの名前の由来は「沖縄の八重山では、とげを「あざ」と呼ぶことから、「あざぎ」(とげの多い木)と呼ばれ、しだいに「あざみ」になった」という説がある。

アザミの名から受けるイメージは、「美しいけど棘がある」。ここまではバラと同じだが、違うのはバラが華やかな社交界の雰囲気なのに対して、アザミは派手さこそないが意味深な感じがして魅惑的である。

「アザミ嬢のララバイ」では、♪春は菜の花、秋には桔梗、そしてあたしはいつも夜咲くアザミ…、と少し暗いけど色っぽく。さらに「アザミの歌」でも、♪思い出だけのあなたゆえ、遠くで倖せ祈りましょう、あたしは酒場の恋あざみ…、と控えめにやさぐれている。
日本では女性の優しさと愁いはアザミ的人生として表現されているようだ。

ちなみに、アザミの花言葉は「触れないで」。英訳するとDon't touch meだが、色っぽくないのでLive me aloneではどうか。何年か前の結構有名な言葉だ。そうか、彼女はバラではなくアザミだったのかと一人で喜んでみたりする。

セイヨウトゲアザミその外国では結構活躍していて、その昔、スコットランドとデンマークが戦争をしていたときに、忍び込んだデンマーク兵がアザミの棘で足を刺され倒れているのをスコットランド兵が発見し、とらえて尋問したところ、敵の作戦計画を知りスコットランドが戦争に勝利したといわれ、以来、スコットランドでは、アザミが国花になっているという。
それにしても刺さって動けなるほどの棘とは強烈である。

また、ドイツという名前が付いている品種もあり、原産地はドイツかと思えば、さにあらず、日本のアザミの園芸種であり、大正時代に園芸屋さんが花を売り出すとき、新しさを強調するために「ドイツ」という言葉を付けたのがはじまりと言われている。

品種も多く、趣味として収集している方もいるというので、ここいらにある品種を羅列する。
アメリカオニアザミ(帰化)、セイヨウトゲアザミ(帰化)、ヤグルマアザミ(帰化)、タカアザミ、エゾノキツネアザミ、エゾヤマアザミ、エゾアザミ、エゾノサワアザミ、チシマアザミ、ミヤマサワアザミ、と10種もある。

春先のアザミは地面に這ったように広がり、柔らかくとげとげしい迫力もなく、食すのに適した時期である。味に関していえばゆがいて灰汁さえ抜けば、春を味わうことができる。おひたし以外は食べたことないけど、十分満足できる味である。

アメリカオニアザミしかし、農家では放牧地の嫌われ者である。棘がいやなのか牛も見向きはせず、秋には枯れた状態で多く残り、草地が更新を訴えているようにも感ずる。翌年、種は十分に飛散しているため倍増し、更に憎まれることになる。

牛は春先に食べるとおいしいことを知らないらしい。


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