Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜

千両梨

千両梨子供のころ、庭に植えてあって秋になると梨のような実をつけるものがあった。食べると梨のような味がするのだが、こいつは小さくて硬くあまり甘くない。
霜が降りるころになると軟らかくはなるが、熟してうまくなったということもない。
どちらかというとボケてやわらかくなった、といったほうが良いくらいだ。
祖父が毎日ナイフで皮をむき食べていたので、誘われて食べるのだが、たまに甘いのがある程度で子供向きではなかった。
食べるより投げて遊んだ記憶のほうが多く、千両梨という名を知ったのはいつだっただろう。
興味もないのですぐに忘れてしまったが。

場所は違うが、庭の一角で固そうな実をたわわに付け、たまに妻がコンポートと称して甘く煮付ける。せっかく作ったのだから食べるが、名ばかりで味は伝わってこない。おいしいかと聞かれて返答に困り黙っている。と、これは「梨のつぶて」か。
歌舞伎世界のことを梨園というが、昔の中国で芸人達が梨の木のある庭園に集められ、芸を磨いたことによる。

日本原産という説と中国原産という説があるが、名はたくさん実がつくところに由来している。

しかし値は残念ながら一山いくら・・・、というよりは売っているのだろうか???。
梨の種類では中国梨というのもあり、味は和梨に近く形は洋ナシ風らしい。ぜひ食べてみたいものである。
当地で採れる千両梨は前述したとおりだが、道央あたりでは大きく甘くシャリシャリ感があるらしい。
暖かい地方ではそれなりに熟成するのだろうか。
とはいえ豊水や二十世紀にゃかなわないでしょうけど。
枝打ちを行い、花を摘んで実の数を減らすと何とかなりそうな気もするが、あの味では効果もあまり期待できずほったらかしになっている。

水分たっぷりの梨をあごが疲れるほど食べるのが好きである。
あのシャリシャリは石細胞といわれるものが細胞壁を硬くしていることによるものだそうで、石細胞とは言い当てている感じがする。
洋ナシには和梨ほど石細胞がないので食感はだいぶ違うが、あれはあれでおいしい。
水分たっぷりの和梨を食べているとこの上ない幸せを感じるが、甘みの強い洋ナシを食べるのも甲乙付けがたいくらい好きである。
洋ナシはいわゆる少しボケた風な感じでも十分うまいが、和梨のボケたのは張りのない太鼓を触っているようでよろしくない。
石細胞が風化しているのだろう。


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