Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の阿部嗣さんの野鳥コラム。

身近な鳥たち

森のドラマー キツツキの仲間

今回はキツツキの仲間たちを紹介しましょう。
中標津町には、北海道に生息するキツツキの仲間たち8種のうち、1種を除いた7種が生息しています。

では最初に「ヤマゲラ」を紹介してみましょう。
「ヤマゲラ」はその名のとおり、人里よりも山奥の森に住んでいる鳥で、キツツキの仲間の中では、本州から沖縄に住む「アオゲラ」とともに全体が緑色をした特徴のある鳥です。オスのひたいには少し赤い部分がありますが、メスにはありません。
夏には人里で見ることはありませんが、寒い冬にはバードテーブルの脂身にやって来ることもあります。養老牛温泉の旅館のバードテーブルには、よくやって来るそうです。
「キョッ、キョッ」、「ピヨーピヨピヨピヨ」などと鳴きます。

次に「クマゲラ」を紹介しましょう。
この鳥はキツツキ類のうちで一番大きく、頭の赤色を除けば全身が黒いため、「クマゲラ」と名付けられたものです。
オスはあたまのテッペン全部が赤いのですが、メスは頭の後ろが少しだけ赤いので、見分けがつきます。「ヤマゲラ」よりも、さらに深い原生林に住み、「キョーン、キョーン」とよくひびく声で鳴きます。
武佐岳や標津岳のふもとの森で見ることができますが、年々森の木が切られて住むところがせばめられ、数がへってきています。
天然記念物に指定されている貴重な鳥です。

アカゲラ次は皆さんよくご存じの「アカゲラ」です。大きさは「クマゲラ」の45p、「ヤマゲラ」の29pに比べると大分小さく、23pと「ツグミ」位の大きさで、全体に白と黒のコントラストが強く、名前のもととなった、下腹部と頭が赤いという特徴のある姿をしています。オスは頭の後ろが赤く、メスにはそれがありません。
木にとまっている姿を後ろからみると、背中に白いVの字のパターンが目立ちます。
森林公園や丸山公園では1年中見ることができますし、また、冬のバードテーブルの常連としてもおなじみです。
「キョッ、キョッ」とよく通る声で鳴きます。

次は「オオアカゲラ」です。
この鳥は「アカゲラ」に比べ、28pと少し大きいところからこの名がつきました。白と黒のコントラスト、下腹部の赤は似ていますが、オスの頭の赤はテッペン全体にわたっています。また「アカゲラ」の背中にあるVの字のパターンはなく、白い横縞が目立ちます。
鳴き声は「アカゲラ」によく似ています。

次は「コアカゲラ」です。
名前のとおり、赤い頭をしているキツツキの中で一番小さいのがこの鳥です。16pと「スズメ」より少し大きい位で、やはり白と黒とのコントラストが特徴ですが、背中は黒よりも白い部分が多い感じに見えます。
オスの頭はやはり赤いのですが、メスにはそれがありません。
鳴き声は「キョッ、キョッ」と「アカゲラ」より少し小さい声です。

コゲラ 次は「コゲラ」です。
名前のとおりキツツキの仲間のうちで一番小さな鳥で、15pと「スズメ」と同じ位の大きさです。
これも白と黒の鳥で、オスの頭の両側に小さな赤い部分がありますが、野外ではほとんど見えません。
鳴き声は「ギィー、ギィー、キッキッキッ」と地味な声です。

次にキツツキの中で一風変わった鳥を紹介しましょう。これまで紹介した6種は、全て1年を通してこの地方に住んでいるのですが、「アリスイ」だけは渡り鳥なのです。春にやって来て繁殖し、冬は本州の中部から南ですごします。
また、生態も変わっていて、キツツキの仲間は「アリスイ」を除いて尾がクサビ形で固く、木に縦にとまった時に足で幹をつかみ、尾で支えることができるのですが、「アリスイ」は尾が角形でやわらかいため、縦にとまることができず、横枝にとまることが多いのです。

アリスイ アリスイ

キツツキの仲間は「アリスイ」を除いて、鋭い足の爪と尾で木の幹に縦にとまることができ、じょうぶなクチバシで木の中に巣くっている虫や、アリの巣の中のアリを食べたり、また、木の実を食べることもあります。
繁殖の季節になると、オスはそのクチバシで木の幹や枝をつついて、大きな音を続けて出します。これはドラミングといわれ、なわ張りを宣言したり、雌を呼ぶためだと考えられます。この習性のため、キツツキが「森のドラマー」と呼ばれる理由となりました。
これまで紹介したキツツキの仲間は、どれも森林に生活し、木の幹に巣穴をあけて繁殖していますから、森の木が切られ、特に太い木が無くなってくると生きていくことができなくなってしまいます。
近頃は、この地方でも森林がどんどん切られていますので、大型の「クマゲラ」にとって巣を作れる木がなくなり、その数は大変少なくなってしまって、なかなかお目にかかる機会が少なくなりました。

ここまで読んでいただいて、疑問に思った点はないでしょうか?、私もかつて思ったことなのですが、それはキツツキの仲間の名前についてです。
つまり、「アリスイ」を除く全ての名前に「ゲラ」がついているということです。たとえば「アカゲラ」はキツツキなのだから「アカキツツキ」でもよさそうなものですが、どうして「ゲラ」がつくのでしょうか。
名前(種名)の由来を調べてみると、もともとは「ケラツツキ」(ケラとは虫をひとまとめにした言葉)と言っていたのが、だんだん変化して「ケラツツキ」→「ケツツキ」→「キツツキ」となったというのが一般的で、各鳥の名称にもともとの「ケラ」が残り、「○○ゲラ」と呼ぶようになったようです。
木をつつくから、ひとまとめでは「キツツキ」と呼ぶようになったものの、「ケラツツキ」の「ケラ」がそれぞれの名前に残ったという、とてもややこしいお話です。

最後に、北海道に生息するキツツキの仲間で、この地方に住んでいない鳥を紹介しておきましょう。それは「ミユビゲラ」といって、大雪山系の森林でしか記録がない、非常に数の少ない鳥です
(日本鳥類標識協会会員 阿部 嗣)


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