Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の阿部嗣さんの野鳥コラム。

身近な鳥たち

春の鳥たち

ここ数年は暖冬傾向とは言え、やはり道東の内陸に位置する中標津町の冬は厳しいものがあります。

標津や根室の沖から流氷が消え、湖や川の氷が落ちると遅い春がやって来ます。

3月になると、阿寒町や鶴居村の給餌場で冬を過ごしていたタンチョウが繁殖のためにやって来ます。まだ雪の残る牧草畑に降り立った彼らの姿は、なかなか風情のあるものです。

最近は少なくなってしまいましたが、春の鳥におけるさえずりの代表格はなんといってもヒバリでしょう。多くの歌にも登場しており、昔から親しまれている鳥です。

お天気の良い日に郊外を散歩すると、ピュルピュルピーチクなどと複雑に鳴きながら空高く昇っていく姿に出会うことができます。鳴き声を聞くのは4月上旬からですが、実はこの鳥は2月の下旬頃にはこの地方にやってきて繁殖の準備をしているのです。でも声を立てないので、気付く人はあまりいないようです。

カッコウ

次にお馴染みなのはカッコウです。この鳥は昔から農作業の目安とされ、道東地方ではカッコウが鳴いたら豆をまけと伝えられてきました。この鳥もご多分にもれず、随分数が減っており、最近は声を聴くことが少なくなってしまいました。

中標津地方でカッコウが鳴きはじめるのは、毎年5月20日頃で、違っても1日か2日です。

カッコウはホトトギス(北海道では少ない)の仲間で、この地方では他にツツドリがやって来ます。ポポ・ポポと竹の筒の切り口を手でたたいたような、特徴のある声で鳴くことからこの名前がつきました。

カッコウの仲間は変わった習性を持っていて、自分で子育てをせず他の種類の鳥の巣に卵を産み、その鳥に育てさせる托卵という方法をとります。カッコウはモズ、アオジ、ノビタキ等に、ツツドリはセンダイムシクイに托卵します。これ等育ての親はどれも小さな鳥たちですから、やがて自分より大きくなったカッコウやツツドリのヒナにせっせと餌を運んでくる姿は、健気というより哀れな感じがします。本当の親はすぐ近くでそれをじっと見ているのですから、神様はなんとも意地の悪い事をされるものです。

オオジシギ

これも最近はあまり見なくなりましたが、オオジシギという鳥がはるかオーストラリアからやって来ます。ジッジー・ジッジーと鳴きながら空高く昇り、ザザザーっと尾羽をならして急降下する様子は見事で、別名カミナリシギとも呼ばれています。

さらにアオジ、ウグイス、ノビタキ、センダイムシクイ、エゾムシクイ等がやって来て、道東の5月の空は一斉に賑やかになります。

アオジ センダイムシクイ

これ等、冬を本州以南の温かい地方で過ごし、春にやって来て繁殖する鳥たちを夏鳥と呼びます。この中には、ノゴマ、シマセンニュウ、エゾセンニュウ、シマアオジ等北海道以北で繁殖し、国内では北海道でしか観察できない鳥もいるので、これらを見ようと本州からやってくるバードウォッチャーが近年増えてきました。

ノゴマ

それにしても何度も前述したように、5年か10年前までは普通に見ることのできた種類が、ここ数年急激にその数が減ってきていることは注目しなければならないと思います。

鳥に限らず、生物は自然の中でバランスを保ちながら生きているものなのですが、人間の営みによってそのバランスが崩れてきているとしたら、私達はここで知恵を出し合わなければいけないのではと考えますが、皆さんはどうでしょうか、ちょっと立ち止まって考えてみてください。

(日本鳥類標識協会会員 阿部 嗣)


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