Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の阿部嗣さんの野鳥コラム。

身近な鳥たち

ガンやカモの仲間

オシドリのオスハクチョウやガン、カモのなかまを分類上ではガンカモ科といい、世界では約150種、日本では約50種が確認されていて、中標津町ではそのうち21種が確認されています。

それらは中型から大型の水鳥で、体は船の形をして泳ぐのに適しています。首は長く足が短くて水かきがあります。嘴(くちばし)は平べったく、縁には細かいギザギザがあります。群れをつくって行動することが多く、種によって、水上、水中、水底、草原、畑、干潟等でエサをとります。
また、 飛ぶ力が強く、長い首を延ばして隊列を組んで飛ぶので、中標津の上空でも、春や秋の渡りの時期には、オオハクチョウやカモのなかまが長いサオになったり、カギになったりして、鳴き交わしならが飛ぶ姿を見ることができます。

日本では、冬鳥として渡ってくるものが多いのですが、種によっては、夏も残って繁殖するものもいます。
その他の特徴としては、 雌雄で色彩が著しく違い別の種と間違うほどのグループと、雌雄の見分けのつかない同色のグループがある、また、多くは地上に巣を作りますが、樹洞や土の穴に営巣する種もいます。

抱卵・子育ては、もっぱら雌の役目で、自分の綿毛をたくさん敷いて温かい巣を作ります。

以下、中標津町で確認された種を分類順に紹介しましょう。

〔ヒシクイ〕ガン類

大形のガン、体は黒褐色で淡色の羽縁があります。下尾筒と上尾筒は白く、尾は灰黒色 で先は白です。嘴は黒く、先端近くに橙色があります。足は橙色です。
飛ぶときは体が重いため、ある程度の助走が必要です。
鳴き声はガガン、ガガンと聞こえ、飛びながら鳴くことが多く、渡りの時期、町の中でも夜更けに上空から聞こえることがあります。
夏にシベリア地方から北極圏までの広い地域で繁殖し、秋には北海道を通過し、本州以南から東南アジアで越冬します(冬場)。
渡りの途中、牧草地に降りて草を食べる群れを見ることがあります。

〔オオハクチョウ〕ハクチョウ類

オオハクチョウ全身白色ですが、顔から首が黄褐色に染まっているものもいます。嘴は黄色で先が黒くとがっています。足は真っ黒です。若鳥は灰褐色で特に頭と首は濃い灰色です。
コホー、コホーと鳴き、よく響きます。
夏にサハリン、カムチャッカ、シベリア地方で繁殖し、冬鳥としてやって来ます。
根室地方の野付湾や風蓮湖、釧路地方の厚岸湖は、渡りの中継地として、ピークには数千羽が集結し、一部は越冬もします。
中標津町では、秋には標津川や丸山公園の池等に、渡りの途中の小さな群れが立ち寄りますし、少数は越冬もします。
最近では、野鳥に関心を持つ人が多くなったせいか、道内各地で給餌をする場所が増え、あちこちで越冬するようになってきました。
野鳥は、本来自然の中で餌を求めて移動していくものなのに、人間が餌を与えて足止めをしている場所が増えているのです。自然の餌は何もないところに、観光目的で鳥寄せをしているとしたら、鳥たちにとって、本当は迷惑な事なのかもしれませんが、どうでしょうか。

次に介するのは「淡水ガモ類」「海ガモ類」「アイサ類」の3グループの16種です。
これ等は前回のヒシクイやオオハクチョウに比べるとかなり小型です。

「淡水ガモ類」は、北海道で繁殖するも多いのですが、大半は冬鳥として渡ってきます。
体は長く、足が体の中央にあり、歩くのが上手です。水の上では海ガモ類に比べ高く浮いて、尾を持ち上げています。
雄と雌では全く色が違い、雄はそれぞれ特徴のある色をしていますが、雌は地味な褐色をしていて、まるで別の種のようです。また種が違っても雌同志は似ているので、初めは見分けるのに苦労します。さらに、雄は夏の終わりから冬にかけて、エクリプスと呼ばれる雌に似た色になりますから、ますますややこしくなります。
雄雌ともに次列風切の一部に翼鏡と呼ばれる金属光沢があり、飛ぶとそれが識別に役立ちます。
水面や水中に逆立ちして主に植物質の餌を採ります。助走をしないで、垂直に飛び立ちます。中標津町では7種が確認されています。

「海ガモ類」は、ほとんどが北海道より北で繁殖し、冬鳥として渡ってきます。
体は淡水ガモ類に比べて短く、足は体の後方についているため歩くのはあま上手ではありません。水の上では体を深く沈め、尾を下げています。
雌雄の色は違いますが、淡水ガモほど極端には違いません。雄のエクリプスは雌に似ます。翼鏡を持つ種は少数です。
飛び立つ時は、水面を足でけって助走をします。水中に潜り、水底の貝等の動物質や魚、そして水草も食べます。別名潜水ガモとも呼ばれます。中標津町では6種が確認されています。

「アイサ類」は、主に冬鳥として渡ってきますが、北海道で少数繁殖している種が2種あります。
ほかの海ガモ類に比べて、嘴が細く先がかぎ形に曲がり、縁にはギザギザがあります。
主食は魚で、水に潜って採ります。
水の上では、体を深く沈め、飛び立つ時は水面を助走します。中標津町では3種が確認されています。
以下分類順に紹介しましょう。

〔オシドリ〕淡水ガモ類

オシドリ雄は美しい複雑な色と柄をしていて、後頭部に冠羽状の羽毛があります。三列風切の内側羽の内弁が幅広く、帆のように立っていて大変目立ち、銀杏羽(いちょうばね)と呼ばれます。
嘴は紅色で先が白く、足は橙(だいだい)色。雌は灰褐色で、他のカモ類の雌より灰色っぽく、目の周りが白く目だち、嘴は灰黒色。
川の上流部の渓流にいることが多く、樹洞に巣を作ります。町内で繁殖が確認されています。

〔マガモ〕淡水ガモ類

マガモ雄は頭が黒いのですが、光沢のある緑色に見えることから「あおくび」と呼ばれます。
白い首輪があり、体は灰白色で胸はワイン色、嘴は黄緑色、足は鮮やかな橙色で非常に目立つ鳥です。
雌は地味な褐色で黒い斑があり、嘴は黒くて周りが橙赤色です。翼鏡は青色で飛ぶとよく目立ちます。グエッグエッと鳴きます。
町内の川や池、沼で繁殖が確認されています。丸山公園の池では、整備される数年前までは繁殖していました。

〔カルガモ〕淡水ガモ類

カルガモ皇居のお掘りへの引っ越しで有名になったカモです。
この種だけは他のカモと違って雌雄同色です。体は地味な褐色で黒い斑があり、顔は淡色で2本の黒線が目立ちます。嘴は黒く先が橙色。足は橙色です。翼鏡は青色です。グエッグエッと鳴きます。
町内のマガモと同じ環境で繁殖しています。

〔コガモ〕淡水ガモ類

コガモマガモに比べずっと小型。雄の頭は栗色で、目の周りから首にかけて緑色の模様があります。体は灰色。腰の両側に黒で囲まれた淡黄色の三角形の斑があり、よく目立ちます。嘴も足も黒く、翼鏡は緑色で上下に白い線が出ます。鳴き声は雄がピリッピリッ、雌はクェークェクェです。
大部分は冬鳥として渡ってきますが、この地方で繁殖していますので、町内の川や池、沼での繁殖の可能性があります。

〔ヨシガモ〕淡水ガモ類

コガモ雄の後頭の羽毛は伸びて冠羽になっいて、紅紫色と緑色の光沢のある黒で、喉は白くて黒い横線があります。体は灰色で、三列風切が長くてふっさりと垂れていて特徴があり、腰の両側に黄白色と白の斑があります。
嘴は黒く、足は灰褐色で翼鏡は緑色の光沢の褐色です。
大部分は冬鳥として渡ってきますが、町内の川や池、沼での繁殖の可能性があります。

〔ヒドリガモ〕淡水ガモ類

コガモ嘴が短く、首も短いずんぐりした感じのカモです。
雄の額から頭頂は黄白色で、頭部から首は茶褐色、胸はぶどう褐色、他は灰色で、下尾筒は黒です。嘴は鉛色をしています。
雌は褐色で、他のカモの雌より褐色味が強く、腹部は白です。
雄はピューンとという口笛のような声で鳴きます。
冬鳥として渡ってきます。

〔オナガガモ〕淡水ガモ類

オナガガモ体も首も細長く、雄の尾は長く伸びており、雌の尾も他の種に比べて長く、その名のとおりです。
雄の頭は黒褐色で、胸から後頭側面に白い線が細く伸びているのが特徴です。
胸、腹は白く、背と脇は灰色で、腰の両側に淡黄色の斑があります。嘴は黒くて両側は青鉛色。足は鉛灰色です。
雌は褐色で、黒褐色の斑があります。
プリップリッと小さな声で鳴きます。
冬鳥として多数渡ってきます。尾岱沼などの餌を与えているところでは、ずい分増えています。町内では丸山公園の池などにやって来ます。

〔シマアジ〕〔キンクロハジロ〕〔スズガモ〕〔クロガモ〕〔シノリガモ〕〔ホオジロガモ〕の6種は「海ガモ類」で、この地方では主に海岸や内湾、河口に冬鳥として多数やって来ます。中標津町内では、渡りの途中などに少数立ち寄ったものが観察されたものです。
〔シノリガモ〕は町内の川の上流部で繁殖する可能がありますので紹介しておきます。
このカモは小形で嘴は小さく、尾が比較的長くとがっています。雄の頭、背、胸、腹は紫黒色で、顔の前半分、目の後方、首の上部、胸側に黒い線で囲まれた線状の白斑があり、脇は赤栗色、上下尾筒は黒色をしていて、顔を見るとまるで歌舞伎役者の隈取りのようです。一部のバードウォッチャーはその派手さから、「花魁(おいらん)ガモ」などと呼びます。
主に冬鳥として、岩の多い海岸に渡ってきますが、山間部の渓流で少数が繁殖しています。
〔ミコアイサ〕〔ウミアイサ〕〔カワアイサ〕の3種は「アイサ類」で、「海ガモ類」と同様この地方では主に海岸や内湾、河口に冬鳥としてやって来ます。
〔カワアイサ〕は町内の川での繁殖が記録されています。
冬はガンカモの仲間を観察するのにはちょうど良い季節です。紹介した以外の種との出会いが待っているかも知れません。近所の川や池に出かけてはみてはいかがでしょうか。

(日本鳥類標識協会会員 阿 部  嗣)


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