其の34 2018年7月

 中標津へ来てから半年がたちました、新米協力隊の佐藤です。気温が上がり、開陽台から見える景色が変わってきました。牧草地の緑、知床連山からは雪がなくなり、たくさんの牛たちの姿もあります。夏ですね~はちみつソフトがおいしい季節です。
 そんな開陽台からでも見える国後島ですが、みなさん北方領土について人と語り合うことって日常でありますか?最近は2018FIFAワールドカップがロシアで開催され、共同経済活動や日露交流年と様々な場面でロシアを意識する場面があります。そこで今回は、ビザなし交流で択捉島へ訪問してきたお話をしたいと思います。
 択捉島へは“えとぴりか”という鳥の絵が描いてある船に乗り、根室港から15時間で到着します。海の波が高いとすごく揺れるので湯船のお湯が躍り波打つくらい船も揺れます。幸い、船酔いはなかったので元気に島へ向かうことができました。択捉島は他の3島よりも産業が発展していて、人口は約7,000人です。
 そこで、いま私たちがやらなければいけないことはなにか?北方領土問題とはなにか?ということを学べました。
 この機会を与えられるまでは、元島民の方がロシアと交流したいのかな?と違和感がありましたが、元島民の出入りさえ制限されている背景があり、領土問題解決までの間お互いの理解を増進させ解決につなげるという目的があることを知りました。参加者には元島民、返還運動をしている方以外にも、ホームビジットを受け入れている方、報道関係者、専門職員、弁護士etc…と多様な方が訪問していて、当事者以外にも向き合おうとしている人がいるのだと改めて感じました。背景はそれぞれですが、人と人とが繋がって相手を理解することは平和につながると思います。
 私自身、高校の修学旅行では長崎へ行き原爆の被害を目の当たりにしましたが、平和学習は実際に被害にあった地域に比べ浸透していません。それは今回の訪問団員との話からも実感し、また、1月に初めて中標津へきて「還せ!北方領土!」という看板を見て衝撃を受けたことで、きちんと学んでこなかったからだと感じました。今まで知らなかった四島返還の署名活動や、その看板で少しずつテレビでも北方領土のニュースを気にしてみるようになりましたが、まだ他人事で深く考えるきっかけにはなりませんでした。今回の訪問はこんな私が行っていいものなのか?と思いながら参加しましたが、私のような意識が薄い人を少しでも減らすお手伝いが出来たらいいなと思える素晴らしい機会でした。
 いつまでも悲観しているだけでは択捉島の現実は変わらず、前に進めないので、今後どうしたら領土問題が「元島民の合意の上」で、良い方向へ行くか考えなければいけません。また、現状で考えつかなかった案が新たな世代から出てくるかもしれません。そのた
めには、語り継がなければならない歴史があるので、これからも勉強をしつつ身近な人へ発信していくことを目標にしたいと思いました。
中標津町地域おこし協力隊 佐藤 麻央(さとう まお)