青空の下で

 東北地方の大地震・大津波から一週間、苦しみの声の上に悲痛な声が重なり苦悩の日々が続いています。
 朝、出勤のために歩いていると、背中が温かく、春間近の太陽を感じます。空は青空、真冬の空にはない明るい光を感じます。生きている喜び、平和な日々、毎日の決まった生活、確実に流れていく時間、胸いっぱいに吸う空気、私は幸せを感じずにはいられません。
 誰しも、毎日の変わらない時間の流れの中に生活していると、不平や不満が溢れてきて大きな変化を望んだりします。しかし、大きな変化が必ずしも幸せを運んできてくれるとは限りません。庶民の幸せは、やはり変わらぬ普通の生活の中にこそあるのではないでしょうか。
 この大惨事が、各学校の卒業式と重なっていたため、ある小学校での祝辞の中に次のような話を付け加えました。

 最後のお話をする前に、皆さんに、一つお願いがあります。

 ちょうど一週間前、三月十一日、東北地方で、大きな地震と津波、そして原子力発電所での事故がありました。
 皆さんも、テレビで観たと思いますが、多くの人が亡くなったり怪我をしたり、行方不明だったりしています。また、多くの人が避難生活をしています。

 皆さんと同じように小学校を卒業するはずだった人も、何人も亡くなったと思います。
 卒業式が中止になった学校もあります。
 皆さんにとって、今日は、小学校を卒業するという晴れがましい日ですが、

その直前に、
東北地方では、日本でも初めてというような大変な災害が起こったということを、しっかり覚えておいてください。
そして、皆さんは、このように普通の毎日を過ごし、卒業式もきちんとできるという幸せを噛みしめてください。

  小学校の卒業式に社会的な事象は……とおっしゃる方もあるかもしれません。しかし、小さい子は小さいなりに背伸びして学ぶということも大切ではないでしょうか。また、柔らかい頭や心だからこそ、本当のこと大切なことを受け止めることができるのではないでしょうか。私は小さな人を信じたいと思います。
 一月の末に、釧路新聞のコラム欄を書かせていただくことがありました。その中で、教科書には難しい漢字をどんどん使い、読めそうもない字にはルビを付け、その後は辞書を引けばいい、というようなことを書きました。
 学習でもスポーツでも、少しだけ無理なことをさせることが成長につながります。心や人間的な部分も、少しのつらさ、難しさが成長を促すのではないでしょうか。理解の難しい時には大人が補ってあげればいいと思います。きっと、大人も成長できるはずです。

 あとひと月で、東北地方は桜の季節になります。
平成23年3月 教育長
 小 谷 木  透