心が動く

 テレビのニュースで知ったのですが、先天的に乳歯の下に永久歯の芽がないという人が10人に1人の割合でいるそうです。驚きました。驚いたのは、そのようなことがあるのだということ、

 そして、それが10人に1人の割合だということです。中標津の人口は約2,400人ということですから、2,400人。小学生、中学生の総数が2,000人強ですので、200人の児童・生徒が当てはまります。
 ニュースの中では、7本に芽がないという小学生が歯科医で治療していましたが、何とか乳歯を虫歯にせず、20歳から30歳くらいまで維持させるということでした。もちろん、乳歯の限界がきた時には、その部分の歯がなくなるということです。
 なぜ、このようなことになってきたのでしょう。生活の変化、環境の変化、そのほか遺伝子に影響を与える何かのせいなのでしょうか。現在のところ、原因は解っていないとのことです。
 また、治療費は保険が利かず、高額で大変とのことでした。ここにも問題を感じました。金銭に余裕のある人はそれなりに治療を受けられるのですが、治療費を払えない人は早くから乳歯に困難を抱え、影響を受けた永久歯もそのままになってしまうということです。格差社会と言いますが、矛盾を感じます。日本という国は、資本主義の中に上手く社会主義を取り入れていると言われます。高福祉がいつでも全て良いとは限りませんが、子ども達の健康が保障される世の中であってほしいと願います。
 
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 詩人・飯島耕一に「ゴヤのファースト・ネームは」という作品があります。長い詩なので、内容はともかく冒頭『I』を紹介します。

何にもつよい興味をもたないことは
不幸なことだ
ただ自らの内部を
眼を閉じて のぞきこんでいる。

何にも興味をもたなかったきみが
ある日
ゴヤのファースト・ネームが知りたくて
隣の部屋まで駈けていた。

 「興味」「関心」「感動」とは、何だろうか。
 一生懸命勉強し大学を卒業しても、就職が困難な最近の世の中で、「何のために勉強するの?」という子ども達の問いに答えることは難しい。にもかかわらず、大人たち(もちろん、私もその一人)は「学力向上、学力向上」と熱を上げている。

 学力の向上は、本当は、その向こうにあるもののために必要なのだが、向こうがよく見えてこない。
「興味」も「関心」も、もちろん「感動」も、心が動くということ。心が動けば、頭も身体も動きます。
 「興味」や「関心」のあることに出会うと、子ども達はいかに食いついてくるか、学校の教師ではなくとも知っています。「感動」した時、心はカタルシスにより洗われ、気持ちも思考も前を向き、エネルギーが満ちます。子ども達は、自ずから知識欲や学ぶ意欲が湧いてきます。
 さて、大人がすることは何か。「興味」や「関心」「感動」を与えるのではなく、子ども達の心が動くための環境を整えること。子ども達の心がそこに向かうための社会的・家庭的・経済的環境を整えること。後は、子ども一人一人の人生です。
 
平成23年12月 教育長
小 谷 木  透