時にはシリアスな話題を
「社会の真実の見つけかた」(堤未果著、岩波ジュニア新書)という本を読みました。現在のアメリカ合衆国について、特に表立ったニュースとして出てこない庶民・若者、教育についての現状を知ることができました。
印象に残った部分を三か所、紹介します。
『何か事件が起こった時、過ちを犯した犯人を責めることは簡単だ。だが原因に目を向けない限り、同じようなことは何度でも繰り返されるだろう。目を向けるべきは、その悲劇を作り出した背景と構造なのだ』
『おまえら若いのの悪いところは、すぐに結果が出ないとそうやってあきらめるところだよ。まったく、テスト結果だけで成果をはかろうとする教育の最大の問題はこれだ。“待つ”ことが出来ない人間を作り出しちまうんだから』
『教育が人間を育てる種まきだとしたら、すぐに結果が出なくても、その子の中にある善きものが機が熟し花開くのを信じて待つ余裕を、先生や親たちが持てるかどうか。その環境を整えることが、国や行政の役目だろう。競争で追いたて、数字で切り捨て、市民をモノのようにバラバラにする社会では、種は枯れてしまう』
最近の私の仕事に覆いかぶさってきている二つのことがあります。
一つは、一般の人にはあまり知られていませんが、現在、全道の公立学校で「教職員給与費の適正執行等に関する調査」が行なわれています。5年間ほどの期間にわたり全道の教職員に不正がなかったかどうか調べているのですが、調査量の全体は膨大なものになります。不正を正すのは当然のことですが、そんなに多くの教職員が、なぜそんなに多くの不正に関わることになったのか。このことの原因に目を向けなければなりません。
この問題を、単に個人の不正であるということに矮小化し、その責任を個人に求め、個人に処分を課し、その分の給与を返還せしめるということでいいのでしょうか。服務監督者である地教委(現在は、私も責任者の一人)や任命権者である道教委は学校の実態を知らなかったのでしょうか。知っていて是正しなかったとしたら、職務怠慢である。或いは、知らなかったとしたら、管理責任を問われることになるのではないでしょうか。莫大なエネルギーと予算を費やすのですから、問題の根幹にも迫るべきではないのかと思ってしまいます。
もう一つは、平成23年度で5回を数えた全国学力学習状況調査の結果についてです。報道機関を含め、世間や教育関係者により、北海道の学力が低い、とりわけ根室管内の学力が低いとの大合唱が起きています。どのような学力であろうと、低いより高い方が良いというは、私の基本的な考えです。しかし、また、そのことだけが教育の全てかというと、そうではないと言わざるを得ません。
この調査は、スタート時に、文部科学省も道教委も、学力の一部の調査であり決して競争を煽るものではないことを強調しました。ですから、出てきた数字に捉われ過ぎて一喜一憂するのではなく、確かな検証のもとに一歩一歩課題の改善がなされなければなりません。調査とその結果は、子ども達がどのような領域や傾向の問題が出来ていないのか、身に付けるべきどんなことが身に付いていないのかを教えてくれる資料です。調査や結果は目的ではなく、あくまでも手段です。
一歩一歩の改善の積み重ねが、例えば、小学校を卒業するときに全員が分数を理解しているといったことに繋がるのではないでしょうか。学校では、地道な努力が続けられています。学校の外側からしなければならないのは、その努力を支え、手助けしてあげることです。教育の全てが学校で完結するわけではないのです。
組織というものは放っておくと、舵を取る者のいないまま、組織そのものが意思を持っているかのように動き出してしまうようです。本当は、組織を構成している人間の意思の集約で動くべきではないでしょうか。組織の健全さは、不断の議論や検証によって保たれるのではないでしょうか。
いつもと、少しトーンの違う話になってしまいました。時には、シリアスに考えるのもいいのではないでしょうか……
印象に残った部分を三か所、紹介します。
『何か事件が起こった時、過ちを犯した犯人を責めることは簡単だ。だが原因に目を向けない限り、同じようなことは何度でも繰り返されるだろう。目を向けるべきは、その悲劇を作り出した背景と構造なのだ』
『おまえら若いのの悪いところは、すぐに結果が出ないとそうやってあきらめるところだよ。まったく、テスト結果だけで成果をはかろうとする教育の最大の問題はこれだ。“待つ”ことが出来ない人間を作り出しちまうんだから』
『教育が人間を育てる種まきだとしたら、すぐに結果が出なくても、その子の中にある善きものが機が熟し花開くのを信じて待つ余裕を、先生や親たちが持てるかどうか。その環境を整えることが、国や行政の役目だろう。競争で追いたて、数字で切り捨て、市民をモノのようにバラバラにする社会では、種は枯れてしまう』
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最近の私の仕事に覆いかぶさってきている二つのことがあります。
一つは、一般の人にはあまり知られていませんが、現在、全道の公立学校で「教職員給与費の適正執行等に関する調査」が行なわれています。5年間ほどの期間にわたり全道の教職員に不正がなかったかどうか調べているのですが、調査量の全体は膨大なものになります。不正を正すのは当然のことですが、そんなに多くの教職員が、なぜそんなに多くの不正に関わることになったのか。このことの原因に目を向けなければなりません。
この問題を、単に個人の不正であるということに矮小化し、その責任を個人に求め、個人に処分を課し、その分の給与を返還せしめるということでいいのでしょうか。服務監督者である地教委(現在は、私も責任者の一人)や任命権者である道教委は学校の実態を知らなかったのでしょうか。知っていて是正しなかったとしたら、職務怠慢である。或いは、知らなかったとしたら、管理責任を問われることになるのではないでしょうか。莫大なエネルギーと予算を費やすのですから、問題の根幹にも迫るべきではないのかと思ってしまいます。
もう一つは、平成23年度で5回を数えた全国学力学習状況調査の結果についてです。報道機関を含め、世間や教育関係者により、北海道の学力が低い、とりわけ根室管内の学力が低いとの大合唱が起きています。どのような学力であろうと、低いより高い方が良いというは、私の基本的な考えです。しかし、また、そのことだけが教育の全てかというと、そうではないと言わざるを得ません。
この調査は、スタート時に、文部科学省も道教委も、学力の一部の調査であり決して競争を煽るものではないことを強調しました。ですから、出てきた数字に捉われ過ぎて一喜一憂するのではなく、確かな検証のもとに一歩一歩課題の改善がなされなければなりません。調査とその結果は、子ども達がどのような領域や傾向の問題が出来ていないのか、身に付けるべきどんなことが身に付いていないのかを教えてくれる資料です。調査や結果は目的ではなく、あくまでも手段です。
一歩一歩の改善の積み重ねが、例えば、小学校を卒業するときに全員が分数を理解しているといったことに繋がるのではないでしょうか。学校では、地道な努力が続けられています。学校の外側からしなければならないのは、その努力を支え、手助けしてあげることです。教育の全てが学校で完結するわけではないのです。
組織というものは放っておくと、舵を取る者のいないまま、組織そのものが意思を持っているかのように動き出してしまうようです。本当は、組織を構成している人間の意思の集約で動くべきではないでしょうか。組織の健全さは、不断の議論や検証によって保たれるのではないでしょうか。
いつもと、少しトーンの違う話になってしまいました。時には、シリアスに考えるのもいいのではないでしょうか……
平成24年3月 教育長
小 谷 木 透
小 谷 木 透
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中標津町 電話番号:0153-73-3111FAX:0153-73-5333
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