故郷に帰る
平成26年11月4日更新
ある本に、詩人が故郷を恋しがることについて、次のように語られていました。故郷とは幼少期の山河の記憶のことらしく、その山河の記憶をときに泣くようにうたうのは、ひょっとすると、大人である現状を厭い、両親の愛にくるまれていたのどかな日日にもどりたいという叫びであるかとおもったり……
これほどに抒情的ではないにしろ、異郷に在るとき誰もが故郷の山河をふと思い浮かべたり、時に切なくまでそこに抱かれたいと思うことがあるのではないでしょうか。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ある」が多くて申し訳ないのですが、ある研修会でのある人の話です。ある県のある市では、さまざまな集まりの最後に唱歌の「故郷」を合唱するということです。もちろん、あの「兎追ひし彼の山……」の「故郷」です。ただ、3番の「志を果たして、いつの日にか帰らん」の部分を「志を果たしに、いつの日にか帰らん」と歌うそうです。
つまり、都会に出て行った若者が都会においてその志を遂げ、いつの日か故郷に錦を飾るということではなく、都会に勉学に行った若者が勉学を終え、それを活かし自分の志を遂げるために故郷に帰るということです。そのために、若者よ!故郷に戻って来い!という思いを表現しているということです。
私たちも同じようなことを議論することがあります。大学を卒業したら中標津町に戻ってきてほしい。そして、地元にいる人とともに地域づくり町づくりをしてほしいと……ただ、このような議論の最後は、「でも、大学を卒業してきた若者を受け入れる企業が職場が地元にあるだろうか」ということで終わります。
また、前述のある研修会での話ですが、「サラリーマンとしての仕事がない」で終わっていては話は進まないと、講師の方がおっしゃっていました。中標津町で言えば、一次産業の酪農もあるではないか、畑作も頑張っている。また、中標津町の利点を活かした起業も可能ではないか。そのような大変ではあるが実りや喜びの大きい仕事の良さが、なぜ伝わっていないのだろうか。私たちは、地域や町を愛する子どもたちを育てているのだろうか。
さて、話がやっと教育の分野に入ってきました。
中標津町では、中学校・高等学校でキャリア教育の一環として職業体験学習を行っています。町内の企業や事業所・商店などに協力をいただき、また青少年サポートシステム(ニーズ)という団体にコーディネートをお願いし、多くの生徒が参加しています。生徒の希望を大切にした形をとっていますが、農業を体験したいという生徒はいないようです。本来ならば、その目的から全員が農家に体験に伺ってもいいのではないかとも思えます。大いに今後の課題と捉えています。
大学を卒業し、故郷で起業する若者はどのようにすれば育つのか。チャレンジャー精神を高めることは当然ですが、そのためには逞しい人間を育てなければなりません。さらに、逞しい人間を育てるにはたくさんの失敗の経験をさせなければなりません。社会は人の集まりですから軋轢が生まれます。軋轢はトラブルを発生させます。失敗もトラブルもたくさん経験し、それを乗り越える力を身につけなければなりません。自分自身の力と他人の助けの中で挫折を乗り越えたとき、人は成長します。
そのためには、社会ではなかなか許してもらえない失敗に対して、教育は多くの失敗を受け止める許容の精神を根底に持たなければなりません。
中標津の子どもたちにとって故郷は、武佐岳であり、標津川であり、牛の遊ぶ牧野であり、白い花を輝かせるジャガイモ畑であり、それら全てを包む清々しい空気そのものであるはずです。
中標津の素晴らしい自然環境をしっかりと保つと同時に、志を果たしに若者が戻ってくる故郷であることを願うばかりです。
ある本に、詩人が故郷を恋しがることについて、次のように語られていました。故郷とは幼少期の山河の記憶のことらしく、その山河の記憶をときに泣くようにうたうのは、ひょっとすると、大人である現状を厭い、両親の愛にくるまれていたのどかな日日にもどりたいという叫びであるかとおもったり……
これほどに抒情的ではないにしろ、異郷に在るとき誰もが故郷の山河をふと思い浮かべたり、時に切なくまでそこに抱かれたいと思うことがあるのではないでしょうか。
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「ある」が多くて申し訳ないのですが、ある研修会でのある人の話です。ある県のある市では、さまざまな集まりの最後に唱歌の「故郷」を合唱するということです。もちろん、あの「兎追ひし彼の山……」の「故郷」です。ただ、3番の「志を果たして、いつの日にか帰らん」の部分を「志を果たしに、いつの日にか帰らん」と歌うそうです。
つまり、都会に出て行った若者が都会においてその志を遂げ、いつの日か故郷に錦を飾るということではなく、都会に勉学に行った若者が勉学を終え、それを活かし自分の志を遂げるために故郷に帰るということです。そのために、若者よ!故郷に戻って来い!という思いを表現しているということです。
私たちも同じようなことを議論することがあります。大学を卒業したら中標津町に戻ってきてほしい。そして、地元にいる人とともに地域づくり町づくりをしてほしいと……ただ、このような議論の最後は、「でも、大学を卒業してきた若者を受け入れる企業が職場が地元にあるだろうか」ということで終わります。
また、前述のある研修会での話ですが、「サラリーマンとしての仕事がない」で終わっていては話は進まないと、講師の方がおっしゃっていました。中標津町で言えば、一次産業の酪農もあるではないか、畑作も頑張っている。また、中標津町の利点を活かした起業も可能ではないか。そのような大変ではあるが実りや喜びの大きい仕事の良さが、なぜ伝わっていないのだろうか。私たちは、地域や町を愛する子どもたちを育てているのだろうか。
さて、話がやっと教育の分野に入ってきました。
中標津町では、中学校・高等学校でキャリア教育の一環として職業体験学習を行っています。町内の企業や事業所・商店などに協力をいただき、また青少年サポートシステム(ニーズ)という団体にコーディネートをお願いし、多くの生徒が参加しています。生徒の希望を大切にした形をとっていますが、農業を体験したいという生徒はいないようです。本来ならば、その目的から全員が農家に体験に伺ってもいいのではないかとも思えます。大いに今後の課題と捉えています。
大学を卒業し、故郷で起業する若者はどのようにすれば育つのか。チャレンジャー精神を高めることは当然ですが、そのためには逞しい人間を育てなければなりません。さらに、逞しい人間を育てるにはたくさんの失敗の経験をさせなければなりません。社会は人の集まりですから軋轢が生まれます。軋轢はトラブルを発生させます。失敗もトラブルもたくさん経験し、それを乗り越える力を身につけなければなりません。自分自身の力と他人の助けの中で挫折を乗り越えたとき、人は成長します。
そのためには、社会ではなかなか許してもらえない失敗に対して、教育は多くの失敗を受け止める許容の精神を根底に持たなければなりません。
中標津の子どもたちにとって故郷は、武佐岳であり、標津川であり、牛の遊ぶ牧野であり、白い花を輝かせるジャガイモ畑であり、それら全てを包む清々しい空気そのものであるはずです。
中標津の素晴らしい自然環境をしっかりと保つと同時に、志を果たしに若者が戻ってくる故郷であることを願うばかりです。
平成26年11月 教育長
小 谷 木 透
このページの情報に関するお問い合わせ先
中標津町 電話番号:0153-73-3111FAX:0153-73-5333
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