第42回 現実と理想
気がつくと、9月も終わりです。自動車を運転していて、街路樹のナナカマドの実が真っ赤に色づいていることに驚いたりしています。今年は雨ばかりの夏、幾つかの台風にも見舞われ各地の被害も大きかったと報道されています。中標津においても農産物を中心に大きな影響が出ているようです。何か、本当に夏があったのだろうか、あのギラギラと太陽に焼かれる日々があったのだろうか、夏休みが終わって登校した子どもたちの顔は真っ黒になっていたのだろうか、そんなことを思ってしまいます。
9月末で中標津町長は小林氏から西村氏に替わりましたが、小林町長は8年間、本当に判断と決断の日々を過ごし中標津町のリーダーとして職責を果たしてこられました。心から感謝とお礼の言葉を捧げたいと思います。
私は、7年前に突然お誘いを受け、教育長に就任しました。その折、議会において就任の挨拶をさせていただいたのですが、次のようなお話をしたことを思い出します。7年間、肝に銘じながら過ごしてきました。
「地域社会には多くの課題があり、子どもたちも、その中で生活している以上は社会の問題から離れて生きることはできません。その上、子どもたちは成長の過程で立ち向かい、乗り越えなければならないたくさんの課題に直面しています。大切なのは、大人の温かいまなざしではないでしょうか。私は、町民の皆様と、子どもの問題は大人の問題、そして社会の問題であるとの、共通認識をしたいと存じます」
現在、ニュースで報じられるさまざまな事件を見聞きしていますと、社会全体も一人一人の人間も不平・不満そのものと化している、と断言したらあちこちから叱られることになるでしょうか。
『知足』という言葉があります。足るを知るということですが、何でも低きで満足せよとか何事も我慢が大切というばかりの意味ではないと認識しています。言葉が相当しているかどうかは自信がないのですが、『分を知る』に通ずるものと思います。ところが、人間の欲望は限りがなく、一つのものを手に入れると二つ欲しくなり、二つ手に入れると三つ欲しくなるというものです。そのうち、他人の持っているものを奪ってでも欲しくなるということもあります。人間の欲望は無限です。ただ、私も人間の欲望を全面的に否定しようとは思いません。限りない欲望こそが、世界や人類や社会の進歩を押し進めてきたのも事実です。進歩というものは、常に人間の欲望の結果として達成され続けてきました。そんな、欲望の果てにある進歩などいらないと言い切れればよいのですが、それも簡単には言えません。
ですから、「ほどほど」「適当なところで」と思いますが、「そんなこと、できるわけがない」という言葉が返ってきそうです。
現在の政治状況をみると、自民党の強さは現実からしか物事を判断しない強さと言えるのではないでしょうか。私の政治スタンスは自民党を批判することにあったり、民進党を擁護することにあるわけではありません。もちろん、共産党や公明党が良いと主張するつもりもなければ、右翼や新左翼に自分の位置を定めようとも思いません。
「現実から物事を判断する」ことは、とても大切なことです。しかし、現実しかなく、そこに想像力のかけらもないのだとしたら、それはつまらない現実主義と言わざるを得ません。人は現実を突きつけられると、ほとんどのことに頷いてしまい、ぐうの音も出ません。でも、よく考えてほしいのです。目の前に現実があるから、その現実に沿って、その現実を原点として判断し行動しなければならないのでしょうか。現実は、つくられてそこにあるものとは限らず、私たちがつくるのだと考えることはできないでしょうか。
そのためには、現実をつくるためには理想が必要です。理想を持ち、混沌を理想に少しでも近づけようと努力し、現実をつくっていくことこそが大切です。現実をつくるという欲望が必要です。その欲望が私たちの生活を進歩させることになります。
稚拙ですが、思いのたけは書いたという反面、矛盾した論理の展開かなと……
9月末で中標津町長は小林氏から西村氏に替わりましたが、小林町長は8年間、本当に判断と決断の日々を過ごし中標津町のリーダーとして職責を果たしてこられました。心から感謝とお礼の言葉を捧げたいと思います。
私は、7年前に突然お誘いを受け、教育長に就任しました。その折、議会において就任の挨拶をさせていただいたのですが、次のようなお話をしたことを思い出します。7年間、肝に銘じながら過ごしてきました。
「地域社会には多くの課題があり、子どもたちも、その中で生活している以上は社会の問題から離れて生きることはできません。その上、子どもたちは成長の過程で立ち向かい、乗り越えなければならないたくさんの課題に直面しています。大切なのは、大人の温かいまなざしではないでしょうか。私は、町民の皆様と、子どもの問題は大人の問題、そして社会の問題であるとの、共通認識をしたいと存じます」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
現在、ニュースで報じられるさまざまな事件を見聞きしていますと、社会全体も一人一人の人間も不平・不満そのものと化している、と断言したらあちこちから叱られることになるでしょうか。
『知足』という言葉があります。足るを知るということですが、何でも低きで満足せよとか何事も我慢が大切というばかりの意味ではないと認識しています。言葉が相当しているかどうかは自信がないのですが、『分を知る』に通ずるものと思います。ところが、人間の欲望は限りがなく、一つのものを手に入れると二つ欲しくなり、二つ手に入れると三つ欲しくなるというものです。そのうち、他人の持っているものを奪ってでも欲しくなるということもあります。人間の欲望は無限です。ただ、私も人間の欲望を全面的に否定しようとは思いません。限りない欲望こそが、世界や人類や社会の進歩を押し進めてきたのも事実です。進歩というものは、常に人間の欲望の結果として達成され続けてきました。そんな、欲望の果てにある進歩などいらないと言い切れればよいのですが、それも簡単には言えません。
ですから、「ほどほど」「適当なところで」と思いますが、「そんなこと、できるわけがない」という言葉が返ってきそうです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
現在の政治状況をみると、自民党の強さは現実からしか物事を判断しない強さと言えるのではないでしょうか。私の政治スタンスは自民党を批判することにあったり、民進党を擁護することにあるわけではありません。もちろん、共産党や公明党が良いと主張するつもりもなければ、右翼や新左翼に自分の位置を定めようとも思いません。
「現実から物事を判断する」ことは、とても大切なことです。しかし、現実しかなく、そこに想像力のかけらもないのだとしたら、それはつまらない現実主義と言わざるを得ません。人は現実を突きつけられると、ほとんどのことに頷いてしまい、ぐうの音も出ません。でも、よく考えてほしいのです。目の前に現実があるから、その現実に沿って、その現実を原点として判断し行動しなければならないのでしょうか。現実は、つくられてそこにあるものとは限らず、私たちがつくるのだと考えることはできないでしょうか。
そのためには、現実をつくるためには理想が必要です。理想を持ち、混沌を理想に少しでも近づけようと努力し、現実をつくっていくことこそが大切です。現実をつくるという欲望が必要です。その欲望が私たちの生活を進歩させることになります。
稚拙ですが、思いのたけは書いたという反面、矛盾した論理の展開かなと……
平成28年9月 教育長 小 谷 木 透
このページの情報に関するお問い合わせ先
教育委員会管理課 電話番号:0153-73-3111FAX:0153-73-5333
教育委員会管理課 電話番号:0153-73-3111FAX:0153-73-5333