耳鼻科の現状について

町立中標津病院 耳鼻咽喉科医長 三嶽 大貴

 皆さんこんにちは。町立病院の耳鼻咽喉科の三嶽(みたけ)です。日頃とてもせわしない外来でご迷惑をおかけしております。当科の現状と診療について、この紙面でご報告させていただきます。
ご承知かもしれませんが、耳鼻咽喉科の常勤医師は根室管内で私一人という現状です。従って羅臼町や根室市など町内外から多くの患者さんが受診されます。
 当然その中で重症の方は入院治療や手術治療が必要であったりします。手術は毎週数件行っております。
 これまで釧路や札幌に紹介していた患者さんも、一部の疾患を除いては、ほぼ当院で治療できると思っておりますし、実際そうしております。また、北大から連日のように出張医の先生にお手伝い頂いて、毎日をこなしている状況です。これからも患者さんの症状に応じて限られた時間をうまく配分して診療にあたろうと考えており、「ながばなし」などはできませんが、ご理解下さい。
 皆さんが耳鼻科の病気ですごく困ったときは必ず私が対応して全力で診療にあたります。
 さて、当科を受診される患者さんの中では、お子さんが多いのもこの地域の特徴です。特に多い小児の「鼻汁」について少しお話させて頂きます。鼻にはフィルター機能、加湿器機能、加温器機能などがあります。これによって鼻から入る空気は異物(ホコリなど)が除かれ適度な湿度と温度となってノドへ運ばれます。鼻に刺激(細菌やウイルスやアレルゲンなど)が加わると、生理機能が働き鼻汁が分泌されます。実はこの理由で、鼻呼吸をしていれば鼻汁は常に分泌されており、普段は意識しません。しかし、分泌量が多くなれば小児の場合は特に鼻から流れ出てきたり、ノドに落ちたり、それで咳が出たり、また、鼻から耳へ管(耳管)を伝って中耳炎を起こしやすくなります。なので「少量の鼻汁」は、体のシステムが正常に作動しているサインだなと考えてください。しかし、鼻汁が多く出て困った場合は、「病気」と考えてください。鼻汁の量や性状(さらさら、ねばねば、黄色いなど)によって鼻かぜ、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎(ちくのう症)などと診断します。こうした場合、まず自宅で「鼻かみ」をトライして下さい。小さなお子さんでは難しいので親御さんが市販の吸引器などで吸ってあげて下さい。嫌がりますがとても効果的な治療になります。
 なお、吸引するときは鼻に入れる側を顔に垂直に入れて下さい。これは鼻の方向が実は顔に真垂直なのでこの方がうまく鼻汁を吸引できます。また、少し大きいお子さんでは、鼻かみを練習してください。親御さんが手を添えて片方の小鼻を押さえながら、ゆっくり、やさしくかむのがポイントです。練習用にティッシュペーパーを2cmほど帯に裂いておいて、かむ鼻の前にかざして鼻からの空気の動きが見えるようにするのも効果的です。
 次に薬です。特に小児の場合には薬の使用は副作用なども考えて最低限にとどめることをおすすめします。当科では病状によっていくつかの薬を組み合わせて処方しますが、症状が軽快したら薬はやめていく方がよいでしょう。抗生物質などある種の薬はきちんと処方された量と日数の内服が必要です。その説明は外来で致します。また、先ほども書きましたが、遠方からも多くの患者さんが受診されます。薬の使用方法を良くご理解いただければ少し長めに(また同じ症状が出た場合に手持ちの薬で対応できるように)処方させて頂くようにもしています。患者さんの生活に合わせて融通の利くようにと考えています。
 最後に、私は赴任してまだ一年もたちませんが、この地域(道東)の特徴を早く理解してより適切に治療ができるようにと思っております。また、学会などへも参加して、中標津でも日本の標準的な耳鼻科治療ができるように日々研鑽致します。多々ご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、今後ともご理解とご協力をよろしくお願いいたします。