Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜

ワラビ

ワラビ火入れをした翌年の植林地には子供の親指ほどの太さのワラビが無数にあった。
最近は火入れをしないので、浅めのササ原や道路縁のヤブで摘んでいる人を季節になると見かける。採る場所が少なくなってきているのだろう。

ワラビは、他に似ている種類が少ないので、生えていれば誰にでも間違えずに採ることができる。
葉が開いていては堅いので、なるべく葉のとじたやわらかいものを採るのがコツであるのはご存じのところだが、食べ方はアク抜きのために湯がいてからサラダにしたり、みそ汁の具に使ったり、また塩漬けにして保存食として利用する方も多いようだ。

居酒屋などで小鉢に入れられ、お通しとしてよく出る。また、おでんの鍋の中にカンピョウで縛り首になったような格好でぐったりしているのもある。
ワラビは食卓のどまん中の大皿に山と盛られて主体的な立場で参加するよりも、どちらかといえば小さめな器にひっそりと病弱気味に「どう、少しだけつまんでみない」ってなぐあいで控えめに参加するほうが似合っているように思える。

個人的にはあまり口にする機会の多い山菜ではないが、子供のころとてもお世話になっている。
まだ火入れをしていた土地やヤブが多くあるころ、一抱え採っては紙袋に入れ、また一抱え採っては紙袋へ入れるという作業を繰り返し、いっぱいになったら自転車の荷台にしばり付け、買いつけをしてくれる場所に走る。ムシロの上にどっと広げ、ひとかたまりづつ秤にかけるごとに金額が増えていくのをドキドキしながら見守り、百円札が2枚もあれば大喜びだった。

当時で1キロ当たり10円か15円だったので、1回せいぜい 100円、多くても300円ぐらいが最高だったような気がする。しかし土日といえばあちらこちらと場所を探して行ったので、子供にとっては結構な金額になっていた。
誰それが何キロをどこで採ってきた、あそこは誰も採っていないから明日はここがいい、などという会話が週末になると情報交換として語られ、朝早く自転車に乗って出かけるのである。そうして貯めたわずかな金は学校帰りの駄菓子に消えてしまうのがオチだったのだが、みんな貧しくて、小遣いがもらえるのは運動会と正月しかなかったころにこのワラビ採りは子供たちの貴重な稼ぎだったように記憶している。


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