Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜

ウラジロエゾイチゴ

ウラジロエゾイチゴ木とも草とも見えるトゲトゲ枝状でツブツブの赤い実がついている植物といえば、「おーあれか、バライチゴ」と、その姿を頭の中に描くことができる人もいるだろう。

以前にクサイチゴ(フレップ)について書いたことがあったが、私が子供のころは永年草地に数多くあったフレップをよく摘んで食べていた。一方のバライチゴは、荒地にもあり、数も少なくトゲもあるので「ヘビイチゴ」などと呼び、けっこうケーベツしていたように記憶している。他所では夏から初秋にかけて日当たりのよい野原にあったので、こちらを多く食べていたという方もいる。味のほうは甘くなかなかのものである。

なぜヘビイチゴと呼んでいたのかははっきりしないが、やぶに生えているのでその場所によくヘビが出たり出そうだったり、また、あまり使い物にならない代名詞にもされ、ヘビナントカという名前がつくらしい。実際にオオヘビイチゴという名の植物もあり、近くに大蛇でもいたのかこちらは食用に向かないとのこと。

このバライチゴがウラジロエゾイチゴという名前であることは今回まで調べていなかった。ラズベリーという名を妻に聞き、格好よかったので使っていたのだが、きっと頭の片隅には「ヘビイチゴだとカッコ悪い」という思いがあったに違いない。

釣りが好きで山の中を歩いていると、色々と楽しいことがたくさんある。第一目的はあくまでも釣りなのだが、樹木や山菜、野鳥にも興味があると楽しさは広がり、根室地方の自然のすばらしさを堪能できる。住んでることに幸せを感じているのは私だけではあるまい。

何年か前に、町内の某所(発見者の特権ということで・・・)において、魚釣りの最中にこのバライチゴを見つけた。発見時は少し遠くから見たので、「なにやら赤いものが一面にあるが、いったい何だろう」といった感じだったが、近くに寄ってみると、なんとバライチゴの大群落!

あたりにも甘い香りが少し漂っている。ひとつつまんで口に入れると甘酸っぱい味が広がる。明日からはこのジャムが食卓を飾ると確信し、すぐさま竿を置きビニール袋を取り出し、「きっとクマが見つけたらむさぼり食うのだろうなぁ」と思いながらセッセセッセとイチゴを摘んだ。それ以来、毎年裏切らずにたわわに実ってくれる赤いダイヤを袋にひとつ摘んでいる。

きれいにゴミを取ってさっと洗い、鍋に入れ砂糖を山盛りにかける。子供はあまりの美しさに垂涎のまなざしとなっている。この時点で食べても充分にうまいのだが、1粒だけ与え、あとは想像して我慢するように説得する。じわっと水分が出たところでじっくり煮る。レモン汁を加えてアクを取り、数時間後にトロトロになったところで火を止めて冷やす。後は小さな小ビンに分けて冷凍庫へ入れ、必要な分だけ溶かして食べる。

冷えたバライチゴのジャムは香ばしく力強い味がする。趣味と少しの知識は生活を豊かにする。ゼイタクはわりと身近にある


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