Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜

ハスカップ

クロミノウグイスカグラの実と葉クロミノウグイスカグラ(黒実鶯神楽)というのが日本名だが、ハスカップで名が通っている。アイヌ語で「枝の上に沢山ある」とのこと。和名の由来を調べると、黒実は熟した果実の色、鶯は花の咲く時期が鶯の鳴く頃で、神楽はウグイスなどの小鳥をつかまえる場所を、狩り座(かりざ)と呼び、かぐらに転訛(てんか)したものなのだそうだ。

本州では高山植物だが北海道では広く自生している。庭に植えて実を採っている方もいると思うが、熟すと薄い皮はすぐ破れてしまい見る間に指が紫色に染まってしまう。味はとても酸味が強い。わりと売れている名前なのでもう少し甘くても良いのではないかと願いながら一応警戒して口に入れるが、いつも裏切られることは無く、すごくすっぱい。野生種は更に酸味が強いとある。

通常、こうした実を持つ植物は、動物に食べてもらい少しでも遠くに種を運んでもらい、縄張りを拡大しようとする本来の姿勢があるべきだが、そのような自然の法則には見向きもせず、口にする鳥もいないのではと思うほど酸味が強い。強く孤独に生きているのは素晴らしいが、あなたは植物として一族の未来をどのように考えているのかと一度聞いてみたいものである。

この酸っぱい実には、ビタミンC、アントシアニン、カルシウムなどが豊富に含まれるので、不老長寿の秘薬といわれていた。特に、アントシアニンという色素は青っぽい色で、植物界では一般的な存在だが、抗酸化作用が強く目によく老化防止にも効果があるという。そういえば妻が目に効くといってブルーベリーを良く食べているが、いったい何目に効くのかは聞かされぬままであるし、老眼はあまり改善されていないような気がする。効果に差があるのだろうか。

何年か前にハスカップを栽培している方のお招きでバケツいっぱい採ったことがある。それはジャムとして利用したが、酸味が強いためになかなか甘味のバランスが整わず結局焦がして苦味まで加えてしまった。後日ジャム作りを得意としている方に聞いたところ、そのさじ加減はなかなか難しく、適当なところで妥協するしかないらしい。その後の何度か挑戦したがやはり酸味の強いジャムになるので甘いケーキにトッピングして食べるようにしたら結構いけた。

最近は北海道土産として、お菓子やジャムなどに採用されるブームもあり、色素として青いバラや青いカーネーションなどの品種改良にも一役買っている。ずいぶん前になるが、母は近くの原野で細い小さな木になるこの実を摘み集めていた。夏の終わりに何度か採取作業につきあったが、ササ原に点在する実をなかなか探すことができず、少量しか持ち帰ることができなかった記憶がある。母は焼酎に漬けて果実酒を造り、遊びに来る友人にご馳走していた。きれいな紫色になるので「摩周の夕日」という名前をつけていたが、妙にマッチしているので評判も良かった。この利用方法が一番良い気がする。

当時は未成年であったので味わうことはできなかったが、あのころの原野は今も残っているのでいつか探してみようかと思う。その酸味の故にいまだに勢力を拡大することなく細々といくつかの実を付けているのだろうか。


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