Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の西村穣さんの植物コラム。

道端の野菜

番外編 ヤツメウナギ(ヤツメウナギ科)

ヤツメウナギは全ての種が細長く、外見は「ウナギ型」であるため、ウナギと混同されがちで、和名にもそれが表れている。ただし、ウナギ類とは無縁と考えても良い動物であり、生物学的特徴も食味もウナギとは全くかけ離れた動物である。一般的な意味で"魚"と見なされるが、その特徴も広くイメージされる「魚類」とは大きく異なる。(ウィキペディアのヤツメウナギの項を要約)

つまり魚ではない動物なのだが、春になると産卵のために河川を遡上する。魚みたいに。いや、それって魚だろう???
初めて見たのは、幼いころ近くの河川で長さ10センチほどの黒く小さいヤツ。吸血動物として恐れられていた。小学生になってから少し大きな川で50センチはあろうかという大物を見たときは、あんなのに血を吸われたら死んじゃうかもしれないと少しドキドキした。

20代半ばの頃、仕事であるお宅に伺ったところ、ちょうど昼時で何やら鍋をつついている。「ヤツメだ、うまいぞ、お前も食べろ。」と皿に盛られて出されたが、それはぶつ切りのヤツメに焼き肉のたれをかけたものであった。見た目もなかなか力強く一瞬躊躇したが、箸をつけないのも失礼かと思い観念して口に入れたが、ゴムのように固くそして生臭く、とてもおいしくはいただけなかった。さすがに一切れで勘弁してもらい早々に引き揚げた記憶がある。

その後、誘われてヤツメを獲りに行ったことがあった。何十年かぶりに見た灰緑色のそれはウネウネと力強くバケツの中で動いていた。こんなに沢山いたんだ、と思うほどで入れ物はすぐにあふれてしまった。
料理は同行した友人にすべて任せ、後日、かば焼きを煮つけたように調理したのを食べさせてもらったがなかなかうまかった。かつてのぶつ切りの記憶があったので、少量しかもらわなかったが、こんなにうまいのならもっともらうのだった、と少し後悔した。
獲りに行ったのも食べたのもそれが最後になった。もう四半世紀以上前のことである。

最近は近場でヤツメがいるという話はあまり聞いたことがない。国内的にも減少しているようで、希少性と栄養価の高さから高級品として扱われているようだ。

さらにその後、春先に小川で山菜を探して歩いていると、大物のウネウネを発見した。そいつは川の中の小石に吸い付きせっせと石を動かしていた。そして何度も何度も同じことを繰り返していた。近くにはもう一匹いて、その作業を黙って見守っているようだった。
たぶん、産卵行動だったのだろう。今思えば、貴重な目撃だったのかもしれないが、ヤツメの目的を最後まで観察しなかったのは、近くにこちらの目的を発見したからである。


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