Nakashibetsu Municipal folk Museum

中標津町在住の阿部嗣さんの野鳥コラム。

身近な鳥たち

川の鳥たち(武佐川を歩く)

長かった道東の冬もようやく去り、春らしくなってきました。 間もなく、野山はいっせいに緑に包まれる事でしょう。
山菜採りや、魚釣りなどで自然の中へ出かける機会が多くなることと思います。
そんな時に川沿いを歩くと、水と密接に関わりあって生きている鳥たちと出会えます。

中標津町には、標津川がたくさんの支流を集めて西から東へ流れ、標津町を通り、やがて根室海峡へ注いでいます。
本流は標津岳(標高1,061m)を源としていますが、武佐岳(標高1,006m)山麓を源とする最大の支流に、武佐川という川があります。
この川は俵橋地区で本流に合流している非常に変化に富んだ川です。

それでは鳥たちとの出会いを求めて遡ってみましょう。

合流点付近は、俵橋湿原が少し残っていて、毎年一つがいのタンチョウが営巣しますが、ヒナを一人前に育て上げるまではいかないようです。
このあたりには、このつがいを含めて数羽のタンチョウが夏の間だけ住みつきますので、牧場の水路などで餌(小魚やカエル等)を採る姿を見ることが出来ます。
また、タンチョウとともにアオサギも見られます。

タンチョウ アオサギ

さらに進むと武佐地区に入ります。ここでは標津川から見ると孫にあたるクテクンベツ川が合流しています。
クテクンベツ川は武佐岳山麓の水を集めて流れる川で、上流にはクテクンの滝を始め多くの滝があります。
岩石の多い川で、上流へ進むにつれ変化に富んでいて、渓流に住む様々な鳥たちと出会うことができます。

合流点から中流域にかけての河原では、ハクセキレイが盛んに尾羽を振っています。このセキレイの仲間は、主に河原で餌(昆虫)を採りながら尾羽を上下に振り、石をたたいているように見えることから「石打ち」とか「石たたき」とと呼ぶ地方もあります。
町内では、セキレイの仲間のうち次の3種が見られますが、それぞれ川沿いで住み分けており、見られる場所が異なります。クテクンベツ川でも、下流域ではハクセキレイ、中流域から上流域ではキセキレイ、上流域ではセグロセキレイを見ることができます。
識別のポイントは、ハクセキレイもセグロセキレイも、共に白と黒のコントラストがはっきりした鳥ですが、ハクセキイは顔が白く、セグロセキレイは眉斑が白い他は顔が黒いところです。キセキレイは名前が示すとおり胸や腹が黄色く遠くからでもはっきり分かります。
昔は河原の鳥だったハクセキレイですが、街の中で多く見られるようになった のは、自然環境の変化のせいでしょうか、少し気になる現象です。

ハクセキレイ キセイレイ セグロセキレイ

さらに上流へ進むと、流れの中の大きな岩の上にカワガラスを見ることができ ます。
この鳥は、ツグミよりひと回り小さくて、尾が短くコロンとした体型で、全身黒褐色です。カラスとは縁のない鳥ですが、体の色からカワガラスと名づけられたものです。
水に潜り、川底を歩き廻りながら餌である水棲昆虫を採る行動は見ていて飽きません。

武佐川の中流域は、ほとんど農地になっていて、防風林やわずかな河畔林(川岸の林)を除いては、樹木が非常に少ない地域ですが、これらの林の中を流れている所では、カワセミやヤマセミのダイビングを見ることかできます。
また、この流域では、数年前から「赤い鳥を見た」「キョロロロ...というを聞いた」などの情報があります。
もしかするとこの地方では記録のないアカショウビンというカワセミの仲間かも知れません。
興味のある方は「幸せの青い鳥」ならぬ「赤い鳥」を探してみてはいかがでしょうか。4月〜5月が出会いのチャンスです。発見された方はご一報下さい。

ヤマセミ カワセミ

(日本鳥類標識協会会員 阿部 嗣)


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