64列マルチスライスCTの導入

町立中標津病院 放射線室 診療放射線技師 関矢 孝弘
 日本人の死因上位である心臓疾患の早期発見と診断に強力な助っ人が登場しました。
64列マルチスライスCTです。
 約40年前に初めて開発されたCTはX線管球から発生させたX線が患者さんを透過して1列の検出器で受けたデータを、コンピューター処理することにより人体の断層画像を得る装置です。その後、寝台を中心にX線管球と検出器を連続回転させながら、寝台を前後方向に連続移動させることで人体の立体的なデータが得られるようになりました。近年では扇状にX線を照射できるX線管球がつくられ検出器の搭載台数を2列、4列、8列、16列、32列と増やす多列化が進み、ついに64列の検出器を搭載するに至ったのが64列マルチスライスCTです。
 この度当院に導入された64列マルチスライスCTは解像度の高い画像を広範囲かつ高速に撮影できるようになったため、170cmの患者さんの救急全身検査をわずか9.4秒で撮影できます。従来のCTでは難しかった心臓のように動いている臓器でも鮮明な断層画像が撮れるようになりました。狭心症の原因となる冠動脈の狭きょう窄さくの発見には今まで釧路の病院などで心臓カテーテル検査が行われてきましたが、検査に伴う合併症の危険性がほとんどなく検査時間も数分で終了し、外来で検査を終えてそのまま帰宅可能なマルチスライスCTに置き換わりつつあります。
 大動脈や腹部、頭頸部、下肢など全身の血管に対しても血管造影検査と同等の情報を得る事ができるようになりました。高画質な3次元画像も作成可能で頚椎や腰椎、膝関節、肩関節などの整形外科領域の診断や治療にも役立ち、立体的な構造を把握するのに有用で広く活用されています。さらには腹部のCT画像から大腸の仮想内視鏡画像やパノラマ画像を作成するソフトウェアや内臓脂肪と皮下脂肪の面積を算出する体脂肪解析ソフトなども標準装備されています。
 高画質を保ちながらX線の被爆を低減させる機能も開発され、必要最小限の被曝線量で優れた画像が撮影できるようになりました。又、装置本体の開口径が750?と大きいので圧迫感が減り閉所恐怖症の方や体格の大きな方への配慮もなされています。手話表示や10カ国語対応オートボイス機能もあり耳の不自由な方や外国人の方へ検査の一連の流れと注意事項を伝える事ができるようになりました。
このように有用性が高い64列CTを導入しましたので、今回町民の皆さんにお知らせさせていただきます